179.息子にも私の権利がある

「ママ?」

九条初が顔を上げると、藤堂澄人も同時に目を上げ、瞳が暗く沈んだ。二人の目が九条結衣と合った瞬間、互いの目の奥には冷たさが宿っていた。

「小林さん、初を連れて上で入浴させて」

九条結衣は藤堂澄人から視線を外し、淡々とした様子で言った。

小林由香里は九条結衣と藤堂澄人の顔を思わせぶりにちらりと見て、躊躇いながら九条初の側に歩み寄った。

先ほど藤堂澄人に冷たい顔で叱られたばかりで、小林由香里は今も彼の暗い表情を見ると、少し怯えていた。

「初くん、おいで、お風呂に入りましょう」

九条初は明らかに気が進まない様子で、まだ藤堂澄人の服を掴んだまま、九条結衣を見上げて言った。「でもママ、まだパパと話し終わってないよ」

「初は先にお風呂に入って、終わったらパパと話をしましょう」