そう言うと、彼は一瞬躊躇し、顔に葛藤の色が浮かんだが、すぐに決意を固めた。「結衣がパパに会いたくないなら、これからパパを家に来させないようにするよ」
九条結衣は、幼い息子がこれほど断固とした態度で言い切るのを見て驚き、しばらく声が出なかった。
「ありがとう、宝物」
彼女は九条初を抱きしめ、心から感謝の言葉を述べた。そして、彼の耳元で小声で言った。「ママはもっと良いパパを見つけてあげるから、いい?」
「うん」
外では、まだ遠くに行っていなかった小林由香里が、九条初と九条結衣の会話を聞いて、長い間驚いていた。
九条結衣は足の具合が悪いため、会社に一週間の休暇を取り、会社の大半の仕事は宮崎社長に任せていた。藤堂澄人もあの夜以来、母子に会いに来ることはなく、九条結衣もそれを気楽に感じていた。