「四年……」
藤堂澄人は目を伏せて、九条結衣の赤く熱くなった頬を見つめながら、かすれた声で言った。「四年も俺を置き去りにして、四年も禁欲生活を強いられた。この借りをどう返してもらおうか?」
九条結衣が何か言おうとした瞬間、彼の強引なキスで遮られた。
そのとき、藤堂澄人が脇に置いていた携帯電話が突然鳴り出し、熱い雰囲気が一瞬にして途切れた。
九条結衣の理性が一気に戻り、自分の露わな姿を見て、顔色が一変した。
藤堂澄人を押しのけ、布団を引き寄せて身体を覆ったが、すでに全身に藤堂澄人の痕跡が残されていた。
藤堂澄人は顔を曇らせながら携帯電話を手に取り、画面を確認すると見知らぬ番号だった。切ろうとした指が滑って、スピーカーフォンのボタンを押してしまい、彼が何か言う前に、木村靖子の興奮した声が聞こえてきた。
「澄人さん、まだC市にいるの?いつ帰ってくるの?」
木村靖子の声を聞いた九条結衣の表情が更に暗くなったが、すぐにいつもの冷淡な様子に戻り、脇にあったバスタオルを身に巻き付け、ベッドを支えにしながら、片足で立ち上がって更衣室へ向かおうとした。
しかし、腕を藤堂澄人に掴まれた。
九条結衣が振り返ると、藤堂澄人は一言も発せずに電話を切っており、表情は良くなかった。
九条結衣の眼差しは冷ややかで、先ほどまでの熱い感情も昂ぶりも消え失せていた。そんな彼女の冷たい視線に、彼は異常なほどの不安を感じた。
「俺と木村靖子は……」
思わず説明しようとした彼の言葉を、九条結衣は冷たく遮った。「興味ないわ」
「結衣!」
「藤堂社長、せっかくだから更衣室から服を持ってきてくれない?」
九条結衣はベッドに座ったまま目を伏せ、急に力が抜けたような様子で、全身から冷気を漂わせていた。それを見た藤堂澄人の眉間の皺は更に深くなった。
彼は何も言わずに更衣室へ向かい、彼女のために軽装の服を持ってきた。九条結衣は足が不自由で、ズボンを履くのに苦労していた。
藤堂澄人は前に出て、何も言わずに手伝い始めた。九条結衣も抵抗せず、雫と彼の助けを借りて服を着た。
その後、二人は極めて重苦しい沈黙に包まれた。
しばらくして、耐えきれなくなった藤堂澄人が口を開いた。「俺と木村靖子に何の関係もないって、どうすれば信じてくれるんだ?」