初は黒くて大きな瞳をぱちくりと瞬かせ、明らかにでたらめを言っているのに、その真面目な様子に、結衣は彼の顔を叩く気にもなれなかった。
「継父」という言葉は、数日前にテレビを見ていた時に覚えたばかりで、ちょうど今使ってみたのだ。
結衣は歯を食いしばり、初の隣で全く拒否する気配のない藤堂澄人を見つめ、目を沈ませて冷たい表情で言った。「藤堂澄人、何か言いなさいよ!」
「何を言えばいい?」
藤堂澄人は結衣を見上げ、立体的な薄い唇が少し上がった。「俺が彼の実の父親で継父じゃないって言えばいいのか?」
結衣はその言葉に詰まり、認めるわけにもいかず、否定もできなかった。
初は目の前の二人を見比べ、結衣の顔に視線を止めて、真剣な表情で言った。「結衣、そんなに細かいことを気にしないで。このおじさんは結衣にぴったりだよ。一番大事なのは、僕とおじさんが似てるから、外に出ても、僕が結衣と他の男の人の子供だとは思われないってことだよ。」
結衣:「……」
藤堂澄人:「……」
息子よ、お前はもともと他の男の子供じゃないんだ。
結衣は息子の澄んだ瞳に浮かぶわずかな期待を見て、実は心の中でよく分かっていた。これまでの何年もの間、他の子供たちには皆パパが側にいるのを見て、この子は一度も口にしなかったものの、心の中には父親への憧れと慕情を抱いていたのだ。
口を開きかけ、彼女は初を見つめ、厳かな表情で言った。「初、ママが好きじゃない男の人のことは、初も好きにならないって言ったよね?」
その言葉を聞いて、初は深く考えずにすぐに頷いた。一方、傍らの藤堂澄人は、結衣が何を言おうとしているのか察したようで、整った眉をわずかに寄せた。
「よろしい。」
結衣は満足げに頷き、手で藤堂澄人を指さして言った。「この人は初が好きだけど、ママは好きじゃない。だから初も無理強いはできないでしょう?」
この時、初の顔には明らかに躊躇いの色が浮かび、澄んだ瞳を眉をひそめた藤堂澄人の端正な顔に向け、しばらく黙った後も、このまま諦めるのは惜しいという様子だった。
結衣の方を向き、小さな唇を噛んで言った。「結衣、もう一度考えてみない?」
「考える必要はないわ。」