199.九条結衣、後悔した

エレベーターの監視カメラに映った九条結衣、廊下の監視カメラに映った九条結衣、彼は偶然だと言い訳を続けていたが、今、九条結衣が自ら認めた以上、もう彼女を弁護することはできなかった。

九条結衣は藤堂澄人の目に一瞬よぎった痛みの理由が分からなかった。あの時、彼女を裏切ったのは彼なのに、彼女はせいぜい不倫現場を押さえようとして途中で思いとどまっただけだ。

彼がした悪質な行為に比べれば、彼女は彼を信じなかっただけだ。それが何か許されざる大罪だというのか?

「九条結衣、まだ得意げなのか?」

藤堂澄人は胸の中で暴れる嵐を抑えながら、目つきをより一層冷たくした。

九条結衣は無造作に肩をすくめ、笑って言った。「そうね、得意よ。残念ながら成功しなかったけど。」

もしあの時本当に不倫現場を押さえに行っていたら、藤堂澄人が堂々と九条家に婚約破棄をしに来られたかどうか見てみたかった。