エレベーターの監視カメラに映った九条結衣、廊下の監視カメラに映った九条結衣、彼は偶然だと言い訳を続けていたが、今、九条結衣が自ら認めた以上、もう彼女を弁護することはできなかった。
九条結衣は藤堂澄人の目に一瞬よぎった痛みの理由が分からなかった。あの時、彼女を裏切ったのは彼なのに、彼女はせいぜい不倫現場を押さえようとして途中で思いとどまっただけだ。
彼がした悪質な行為に比べれば、彼女は彼を信じなかっただけだ。それが何か許されざる大罪だというのか?
「九条結衣、まだ得意げなのか?」
藤堂澄人は胸の中で暴れる嵐を抑えながら、目つきをより一層冷たくした。
九条結衣は無造作に肩をすくめ、笑って言った。「そうね、得意よ。残念ながら成功しなかったけど。」
もしあの時本当に不倫現場を押さえに行っていたら、藤堂澄人が堂々と九条家に婚約破棄をしに来られたかどうか見てみたかった。
そう考えた瞬間、顎に鋭い痛みが走り、彼女は藤堂澄人に背後の冷たい壁に押しつけられていた。
藤堂澄人の手の力は驚くほど強く、その目から放たれる炎は、まるで彼女の顎の骨を粉々に砕いてしまいたいかのようだった。
彼女は眉をひそめて痛みに耐えながら、一言も発することができず、ただ藤堂澄人を恨めしそうに睨みつけ、強情に目に浮かぶ涙を押し戻した。
「九条結衣、そんなことまでできる女が、よくもあの三年間私に真心を尽くしたなどと厚かましく言えたものだな。お前のような女の言葉を信じた私が狂っていたとしか思えない!」
彼の手の力は怒りが激しくなるにつれて強くなり、九条結衣は痛みで抵抗する力もなかった。
藤堂澄人は九条結衣の強情な目に後悔や罪悪感が一切ないのを見て、胸の痛みと怒りが止めどなく込み上げてきた。
九条結衣は藤堂澄人という人間が憎らしくも滑稽だと感じた。人を責める側が、こんなにも正々堂々と責められるものなのかと初めて知った。
あの時、彼女が彼を疑ったとしても、前日に女と密会して、翌日に九条家に婚約破棄をしに来た彼よりはましだったはずだ。
彼女は目に涙を浮かべながらも、頑なに許しを請う様子を見せなかった。
そんな彼女の無言の態度は、藤堂澄人にとっては明らかな黙認に見えた。