203.後悔しなければいい

茶室を出るとき、夏川雫は入り口で田中行を訪ねてきた藤堂澄人とぶつかった。彼女は激しく舌打ちをして、大股で立ち去った。

「これだけ年月が経っても、この短気は直らないな」

田中行は無力に溜息をつき、眉間を揉んだ。

藤堂澄人は田中行と夏川雫の間の事には興味がなく、冷たい表情で前に進み、直接切り出した。「この裁判、勝てるのか?」

田中行は淡々と彼を一瞥し、言った。「勝てるかどうか、君にはわからないのか?」

藤堂澄人は一瞬詰まり、黙り込んだ。

田中行は溜息をつき、真剣な表情で言った。「こんなに大げさに九条結衣と親権を争って、彼女に一生恨まれても構わないのか?」

藤堂澄人の表情が微かに変化した。この瞬間、実は彼自身も、本当に昔の件で九条結衣と親権を争っているのか、それとも昔の件を口実にして子供を奪い取り、そうすることで九条結衣との縁を完全に切れないようにしているのか、わからなくなっていた。