207.靖子は本当に優しすぎる

この母娘は目先のことしか見えず、九条政が九条グループを手にしているのを見て、彼が九条家の天下を握っていると思い込んでいた。しかし、九条家が今日の地位を得られたのは、九条グループのおかげではなく、軍部で名を馳せた九条信という首長のおかげだった。彼は今は退任しているものの、政界と軍界で依然として十分な影響力を持っていた。

母娘が九条結衣を辱めることを夢見ているところに、木村靖子の電話が鳴った。

木村靖子は携帯を取り出して画面を見ると、顔に少し苛立ちの色が浮かんだ。

「誰からなの?」

木村富子は靖子の不機嫌な表情を見て、尋ねた。

「藤堂瞳っていうバカよ」

木村靖子は淡く笑い、目には露骨な軽蔑の色を浮かべながらも、この藤堂家のお嬢様に対する嫉妬を否定できなかった。

「藤堂瞳は藤堂澄人の妹よ。藤堂家に入りたいなら、彼女を軽々しく敵に回してはいけないわ。藤堂奥様になるまでは、この御令嬢様を大切にしないとね」