藤堂瞳は深く考えずに、彼女の言葉を聞いて承諾し、電話を切った。
「藤堂さんは何の電話でしたか?」
木村富子は娘の表情の変化を見て、好奇心を持って尋ねた。
木村靖子は藤堂瞳の最後の言葉で揺れた感情を整え、木村富子に言った。「澄人さんがついに九条結衣と離婚したわ」
「本当?!」
木村富子の目も一瞬輝いた。「靖子、これはあなたにとって千載一遇のチャンスよ。しっかり掴まなきゃダメよ」
「もちろんよ。あの時私があれだけのことをしたのも、藤堂家の正式な藤堂奥様になりたかったからでしょう?今まで何年も待ったわ。もう待てないわ」
木村富子もあの時の出来事を知っていて、口元に冷たい笑みを浮かべた。「九条結衣は今や九条家からも藤堂家からも離れた。前にあなたを侮辱した仇、やっと返せるわね」
「ふん!今度こそ、九条結衣を皆の前で土下座させて謝らせてやるわ!」
そう言いながら、何か思い出したように眉をひそめた。「でも、さっき藤堂瞳の話では、澄人さんがあの私生児の親権を取り戻したって。これからは藤堂家の財産の一部が彼のものになるかもしれないわ」
その子供の存在は、木村靖子母娘は藤堂澄人よりも早く知っていた。九条結衣が藤堂澄人に子供の存在を知られたくないと思っているのを知って、密かに笑っていたのに、結局澄人さんに知られてしまった。
「はっ!やっぱり九条結衣のあの女、そんなに清く正しくなかったでしょう。息子というそんな切り札があって、澄人さんに知らせないはずがないわ。きっとあの私生児を使って澄人さんと仲直りしようとしたんでしょうね」
木村靖子の顔に皮肉と嫌悪の色が浮かび、その後、他人の不幸を喜ぶような笑みを浮かべた。「今はよかったわ。息子を使って澄人さんと仲直りできなかっただけでなく、息子まで奪われて、ざまあみろ」
そう言いながら、口を押さえて、くすくすと笑い出した。
「ただ、藤堂家に私生児が一人増えるなんて、気に入らないわ。財産の半分をあの私生児に分けるなんて、何の権利があるのよ」
彼女の顔に浮かぶ不満を見て、木村富子は穏やかに笑って言った。「バカね、あの私生児がいるからこそ、澄人さんの前で好感度を上げるチャンスなのよ」