206.あなたは自分の心がよく分かっている

藤堂澄人は顔を曇らせて頷いたが、お婆様は逆に焦っているようだった。「あなたを...あなたをどう言えばいいの!」

お婆様は怒りを覚え、藤堂澄人の暗い表情を指さしながらしばらくして、ため息をつき、厳しい表情で言った。「聞くけど、結衣と仲直りしたいの、したくないの?」

藤堂澄人は「したくない」と答えようとしたが、その言葉が喉まで来たところで、どうしても出てこなかった。

自分が育てた孫のことだから、藤堂澄人のこの様子を見て、藤堂お婆様は彼の心の内がよく分かっていた。

「あなたをどう言えばいいの?心の中に彼女がいるのに、どうしてこんな扱いをするの?おばあちゃんに話してみなさい、一体なぜなの?彼女と普通に暮らすのはいけないの?」

藤堂お婆様は本当に理解できなかった。当時、藤堂家と九条家の縁談の時は何も問題なかったのに、突然九条家に婚約破棄しに行って、彼女を死ぬほど怒らせた。理由を聞いても話そうとしなかった。

一年後、結衣が彼を訪ねて結婚を懇願した時、皆は自分がおばあちゃんの立場で彼に結衣との結婚を強制したと思っているが、本当にそうだったのだろうか?

藤堂お婆様は藤堂澄人の表情を見ながら、複雑な気持ちになった。三歳の曾孫ができたことは嬉しかったが、孫と孫嫁の悪化した関係を考えると、心配になった。

「結衣がどんな性格か、あなたも分かっているでしょう。彼女は本当にあなたに深く傷つけられた。今ではあなたが彼女の頼りにしていた息子まで奪ってしまった。彼女があなたを憎まないはずがないわ。」

そう言いながら、お婆様は無力そうに手を振って言った。「もういいわ。若い者たちのことは、おばあちゃんはもう口出ししないわ。どうすべきか、あなた自身がよく分かっているはずよ。」

お婆様が部屋に戻ると、リビングには藤堂澄人一人が残された。彼は眉間を押さえ、ソファーに座り、裁判所の前で九条結衣が彼を見た時の憎しみに満ちた目と、去っていく時の傷ついて無力な後ろ姿が頭から離れなかった。

チクチクと痛む胸を強く押さえながら、リビングに暫く座っていたが、やがて立ち上がって出て行った。

木村富子と木村靖子の母娘は最近、かなり快適な生活を送っていた。九条政が木村富子を娶ることを決意したため、木村靖子は九条家の正式な次女となる。九条家との関係ができれば、誰も彼女を軽視できなくなる。