眉をしかめ、彼は九条結衣の視線を避け、別の方向を見つめた。手のひらから情けないことに冷や汗が滲み出ていた。
九条結衣は冷ややかな目で彼を一瞥し、顔に嘲笑の色を浮かべた。
何を説明する必要がある?
彼女が勘違いして、彼がここに立っているのは彼女に付き添うためだと思うとでも?
脳震盪はしているけど、頭がおかしくなったわけじゃない。
藤堂澄人は彼女が知的障害者を見るような嫌悪の眼差しを向けてくるのを見て、不機嫌そうに眉をひそめ、我慢しようとしたが、結局「その目は何だ?」と口を開いてしまった。
九条結衣は彼を相手にする気も失せ、視線を外してエレベーターの方へ歩き出した。
その様子を見た藤堂澄人は、他のことも構っていられず、足早に彼女を追いかけ、エレベーターのボタンを押す前に彼女の行く手を遮った。「こんな状態で、どこに行くつもりだ?」