実際のところ、彼女は藤堂澄人が一体何をしたいのか分からなかった。離婚を進めている二人が、深夜に同じ部屋にいるなんて、違和感を感じないのだろうか?
九条結衣は藤堂澄人のことをクズだと思っていた。わざと自分に逆らい、病気になった時でさえ安らぎを与えてくれない。
まあいい、ここに残りたいなら残ればいい。
九条結衣は彼を無視することにした。今は、めまいは少し和らいでいたが、まだ体調は優れなかった。
ベッドに横たわろうとして布団をめくった時、彼女は一瞬戸惑った。先ほど吐いて汚してしまった布団が、きれいに取り替えられていた。看護師がいつの間にか交換してくれたのだろうか?
九条結衣はそう考えながら、藤堂澄人の方をちらりと見て、そのまま黙って横になった。
藤堂澄人という大きな存在がそこにいることで、九条結衣は気が散りやすかったが、体の自然な反応には逆らえず、先ほどの出来事で更に疲れていた。
横になってしばらくすると、彼女は眠りに落ちた。
実は、藤堂澄人は病室を離れなかったものの、九条結衣の休息を邪魔しないよう、大きな物音を立てないように気を付けていた。
しばらくして、九条結衣の安定した寝息が聞こえてきた時、藤堂澄人は静かに彼女の側に歩み寄り、布団を掛け直してやった。彼女の顔色を確認し、安らかに眠っているのを見て、やっと安心した。
VIP病室は豪華な家庭的な雰囲気で装飾されており、治療に必要な設備の他に、付き添いの家族用の2メートルのベッドも設置されていた。
しかし藤堂澄人は九条結衣が心配で、そのベッドで寝ることはせず、病室にあった小さなリクライニングチェアを九条結衣のベッドの横に置いた。
長身の体が狭いスペースに収まるのは快適ではなかったが、このように九条結衣の近くにいることで安心感を得られるなら、この程度の不快感など何でもなかった。
彼は体を横向きにして、眠る九条結衣の顔を見つめていた。まるで世界中に二人しかいないかのように。
こうして隣で眠る人の寝顔を見つめているだけで、かつてないほどの満足感を得られることに気付いた。
見つめているうちに、突然眉をひそめた。九条結衣との三年間の結婚生活で、このような時間を共有したことが一度もなかったことを思い出したのだ。
夫婦間で最も普通であるはずの過ごし方が、今の彼にとっては贅沢なものに思えた。