231.日を選ぶより今日がいい

金も、権力も、容姿も持ち合わせ、女性に対しても冷淡な藤堂澄人の人物像は、まさにネット小説でよく見かける理想的な男性主人公そのものだった。

神秘的で、クールで、禁欲的、これはすでに藤堂澄人の代名詞となっていた。

しかし今、客室乗務員は藤堂澄人が「余計なお世話」をして隣の女性にミルクを注文するのを聞いて驚いた。明らかに二人は知り合いで、しかも藤堂澄人の口調から察するに、単なる知り合い以上の深い関係にあるようだった。

案の定、客室乗務員がまだ大きな秘密を発見した衝撃の中にいる時、藤堂澄人は九条結衣に向かって言った。「傷が深いんだ。他の飲み物は駄目だ。」

客室乗務員の表情は、驚きから納得へと変わった。

二人は本当に親しいようだ。もしかしてこの女性が、前回彼が抱いていた子供の実の母親なのだろうか?

なんてこと~~

客室乗務員の心中は、もはや波乱万丈という言葉では表現できず、「津波」という表現の方が適切かもしれない。

「かしこまりました、お客様。少々お待ちください。」

客室乗務員は、なおも優れた職業意識を保ち、笑顔で二人に頷いて、優雅に立ち去った。

心の中の八卦な小人は、すでに手綱の切れた野馬のように四方八方に駆け巡っていた。

一方、九条結衣は突然現れた藤堂澄人に呆気にとられ、なぜ彼がここにいるのか、そして何故こんなにも当然のように彼女の決定を代わりにしているのか分からなかった。

「藤堂澄人、一体何を企んでいるの?」

九条結衣は顔を曇らせ、歯を食いしばって彼を見つめた。先ほどの客室乗務員の目に浮かんでいた「この二人は怪しい関係にある」という表情に気付かなかったわけではない。

「何を企んでいるって?」

藤堂澄人は片眉を上げ、長身を広々とした快適な座席に無造作に沈め、長い腕を肘掛けに何気なく置いた。

一挙手一投足が意図的とも無意図的ともつかない誘惑を帯びており、機内に立っている客室乗務員たちは、興奮してピンクの泡を吹き始めた。

九条結衣は藤堂澄人という人物は浮気で色っぽいクジャクのオスのようだと感じた。どこに行っても羽を広げ、どこでもメスクジャクの目を引くことができる。

かつて自分もそのメスクジャクの一人だったことを思い出し、思わず自分の頬を叩きたくなった。

「どうしてここにいるの?」

偶然にもC市に行くところだなんて言わないでほしい。