携帯を手に取って電話をかけようとした瞬間、一つの影が突然目の前に現れ、吐き気を催すような甘ったるい声が響いた。「澄人ちゃん、来たよ〜」
藤堂澄人の顔が一層険しくなり、眉間に寄せたしわが、心の底からの嫌悪感を惜しみなく表現していた。
「次にそんな女衒みたいな口調で話しかけたら、去勢するぞ」
目の前の男は、天使のような顔立ちで、ふんわりとした茶色の巻き毛、白めの肌色、とても整った顔立ちをしていた。笑うと、左右対称の八重歯が見え、頬には深い笑窪が浮かんでいた。
その容姿だけを見れば、誰もが心を癒されるような美しさだった。
知らない人が見れば、今の芸能界で人気のアイドルスターだと勘違いするかもしれない。実際、多くのスカウトマンが声をかけてきたが、彼の気難しい性格に尻込みして逃げ出していった。