238.私には大胆な考えがある

「私が最初にお前を九条結衣の会社に入れたのは、こんなくだらない話を聞くためじゃない」

藤堂澄人の声は冷ややかで、栗原亜木を見つめる眼差しは、開かれた刃物のように鋭く、その視線が向けられた場所は皮膚が裂けるほどだった。

「私だって最初は行きたくなかったんですよ」

あなたに強要されなければ。

栗原亜木は、藤堂澄人の険しい目を受けて、後半の言葉を飲み込んだ。

「でも、話は変わりますが、兄貴、あなたと九条社長はどういう関係なんですか?こんなに親身になるなんて知りませんでしたよ」

彼は両手で顎を支え、向かいの男を見つめた。愛らしい顔立ちのせいで、女性たちから母性本能を引き出しやすかったが、向かいに座る「父親」からは慈愛の心など微塵も引き出せなかった。

「兄貴の周りには女性がいないし、もしかして九条社長に惚れたんじゃないですか?実際、九条社長は本当に綺麗だし、頭も良くて有能だし、兄貴の好みですよね」