251.私は道理のわかる人間だ

また彼にお茶を注いだ。極めて穏やかな動作なのに、御手洗賢には殺気が迫ってくるように感じられた。

「大野社長、緊張しないでください。お呼びしたのは、ゆっくりお話をしたいだけです。まずはお茶でも飲んで落ち着きましょう」

御手洗賢は茶碗を持ち、思わず手に力が入った。

なぜかわからないが、藤堂澄人が「ゆっくり話そう」と言うのを聞くと、良い話にはならないと感じた。

「藤堂社長は、どのようなお話をされたいのでしょうか?」

御手洗賢は藤堂澄人を見つめ、抵抗する気力すら失せていた。

藤堂澄人は微笑んで、「私の奥様は常に善良で、弱い立場の人に優しく、外で虐められても私に告げ口することもありません。ですから、大野社長、ご安心ください。私の要求もそれほど無理なものではありません」

藤堂澄人がにこやかにそう言っているのを聞いても、御手洗賢は全く安心できなかった。