九条結衣は御手洗賢と何度か接触したことがあり、その男から受けた印象は良くなかった。好色で、貪欲で、少し卑猥な感じがして、今回の特許盗用事件も、おそらく彼の指示によるものだろう。
今、彼女は十分な証拠を持っているとはいえ、実際には栄光にこれほどの賠償金を支払わせることはできないはずだった。
しかし、目の前で行われている記者会見は紛れもない現実で、これには九条結衣も御手洗賢を少し見直さざるを得なかった。
なぜかわからないが、九条結衣はこの事態の展開があまりにもスムーズすぎると感じていた。
さらに九条結衣が予想もしなかったことに、栄光側の対応は驚くほど早く、記者会見の後すぐに財務部門は栄光から5億円の資金を受け取った。これには九条結衣も長い間驚きを隠せずにいた。
退社時、九条結衣が会社のビルを出たところで、あのチュニ病少年...いや、チュニ病青年の栗原亜木と出くわした。