261.野鶏は野鶏のまま

木村富子がなぜ九条家にいて、しかも使用人たちに対してあれほど指図しているのだろう。お爺様は何も言わないのかしら?

中に入ると、使用人たちは彼女を見て次々と頭を下げて挨拶した。「お嬢様」

「お嬢様がいらっしゃいました」

木村富子も九条結衣が突然現れるとは思っていなかった。骨の髄まで九条結衣を恐れているせいか、先ほどまで使用人たちに威張り散らしていた態度を、九条結衣を見た途端に収めた。

そして口元から無理やり笑みを作り、九条結衣に向かって「お嬢様、どうしていらしたの?どうぞお入りください」

九条結衣は冷ややかな目で彼女を一瞥し、そのまま中へ進んだ。木村富子は完全に女主人然として、使用人たちに九条結衣のお茶を入れるよう指示した。

「お嬢様、お帰りなさいませ」

知らせを聞いて駆けつけた執事は、九条結衣を見て目を輝かせ、急ぎ足で近づいてきた。