「もういいよ、私は大丈夫だから、用事がある人は先に行ってください。休みたいから、山本が付き添ってくれれば十分です」
老人が人々を追い払うように言うと、九条結衣は老人が休みたいと言うのを聞いて、当然邪魔をするつもりはなく、頷いて承諾した。
老人に別れを告げた後、九条結衣と藤堂澄人は同時に病院の建物を出た。
「申し訳ありません、藤堂社長。私は山本叔父さんの車で来たので、お送りできません」
そう言うと、素早く歩いて道端へ向かい、藤堂澄人に近づきたくないという様子だった。
彼女の冷淡な態度に対して、藤堂澄人は気にする様子もなく、ゆっくりと彼女の後ろに立ち止まった。
横目で藤堂澄人をちらりと見た九条結衣は、すぐに視線を戻し、彼と会話をする気も見せなかった。
むしろ藤堂澄人の方から声をかけた。「今回特別に帰ってきたのは、九条社長の結婚式に出席するためですか?」