九条結衣が家に入ると、小林由香里は夕食の準備を始めていた。玄関の物音を聞いて、慌てて出てきた。
「奥様、お帰りなさい」
九条結衣が顔を上げると、小林由香里が丁寧にメイクをし、髪を後ろで軽く結い上げ、少しの碎け毛が鬢の辺りに垂れ、何となく色っぽい雰囲気を醸し出していた。
上着は体にフィットしたTシャツで、オフショルダー、胸元が少し開いていて、少し身を屈めると豊かな胸元が見えた。この姿は普段の家での様子とは全く違っていた。
九条結衣は一瞬戸惑い、小林由香里を見つめ、何か考え込むような表情を浮かべた後、すぐに理解した。
これは藤堂澄人というクジャクのために特別に着飾ったのか?
でも、どうして藤堂澄人が来ることを知っていたのだろう?
きっと、自分が帰ってくる前に二人は会っていたに違いない。