様々な滑稽な姿勢と険しい表情で、目の前の二人を睨みつけることしかできなかった。
藤堂澄人は彼らを無視して、九条結衣を守るように連れてエレベーターの方へ向かった。「怖くなかった?」
藤堂澄人の優しい声が九条結衣の耳元に響き、まるで慰めるかのように、九条結衣の心は一瞬だけ落ち着きを取り戻した。
「大丈夫」
彼女は首を振った。確かにさっきの場面は少し怖かったが、彼女は臆病な女性ではないので、そこまで怯えることはなかった。
何気なく後ろを振り返ると、一人が鉄パイプを持って彼らに向かって突進してくるのが見えた。
「澄人さん、危ない!」
九条結衣は思わず叫び声を上げ、藤堂澄人は素早く振り返った。九条結衣の緊張した顔を見て、一瞬呆然とした。
九条結衣は目の前で、その鉄パイプが藤堂澄人の額に当たるのを見た。
鉄パイプの鋭い端が、藤堂澄人の額に長い傷を付けた。
次の瞬間、その男は藤堂澄人に蹴り飛ばされ、同時に、血が藤堂澄人の鼻筋を伝って流れ始めた。
その数人もこの光景に驚き、しばらく呆然としてから、逃げ出すことを思いついた。
連絡を受けた警備主任が数人の警備員を連れて駐車場に急いでやってきた。
怪我をした藤堂澄人を見て、ホテルの警備を担当する警備主任の顔色が一変した。
「藤堂さん、大変申し訳ございません。我々の警備の不手際でご負傷させてしまい、すぐに医師を呼びます」
「必要ない」
藤堂澄人は顔を曇らせ、周囲の空気が恐ろしいほど重く、表情は非常に不機嫌そうだった。彼は九条結衣の手を引いて客用エレベーターに乗り、九条結衣の階のボタンを押した。
「大丈夫?澄人さん、どこか具合が悪くないの?やっぱりホテルに医者を呼んでもらった方がいいんじゃない?」
九条結衣は藤堂澄人を支えながら、彼の大きな体が意識的か無意識的に彼女に寄りかかってくるのを感じ、さらに心配になった。さっきの一撃で頭を悪くしてしまったのではないかと心配だった。
耳元で聞こえる、いつもの冷たく距離を置いた態度とは違う声、記憶の中にだけ残っている懐かしい「澄人さん」という呼び方に、藤堂澄人はさっきの一撃を受けて良かったと思った。
エレベーターが「ピン」という音を立てて、九条結衣の階で開いた。九条結衣は藤堂澄人を支えながら部屋に入った。
「座っていて。ホテルに医者を呼んでもらうわ」