九条結衣の表情が一瞬凍りつき、意識が一気に覚醒し、夜中に起きた出来事が次々と脳裏に浮かんできた。
彼女は藤堂澄人の腕の中から急いで起き上がり、手を伸ばして彼の額に触れ、体温が正常に戻っているのを確認してようやく安堵のため息をついた。
手を引こうとした瞬間、大きな手のひらが彼女の手の甲を覆い、彼の額に押し当てたまま離さなかった。
「目が覚めたか?」
魅力的な声は、目覚めたばかりの掠れた色気を帯びており、九条結衣の心を揺さぶった。
藤堂澄人が目を開けると、陽の光が彼の濃い睫毛に差し込み、目の下に美しい影を落としていた。
九条結衣の視線は、図らずも彼の漆黒の瞳と重なり、それまで落ち着いていた心に小さな波紋が広がった。
不自然に視線を逸らし、さりげなく藤堂澄人の手から自分の手を抜き、平静を装って言った。「熱は下がったわ。後で医者に診てもらいましょう。」