藤堂澄人は反論せず、目に笑みを浮かべながら、静かに彼女が自分の額に忙しく手当てをする様子を見つめていた。彼女の体が近くにあり、かすかな体の香りが漂ってきて、藤堂澄人は思わず喉が渇いてきた。
生理的な反応に気づいた藤堂澄人は、それを隠すように軽く咳払いをした。そして、彼のクールな性格とは不釣り合いな甘えた不満げな声が響いた。
「お風呂の時に手伝ってほしいって言ったのに、断られたじゃないか」
深い眼差しに微妙な光を宿らせながら、九条結衣の顔に視線を留め、まるで当然のように言った。
九条結衣は彼を一瞥し、今が本当に熱を出している状態でなければ、彼の口にも数針縫ってやりたいところだった。
「はい、これで傷口が感染しないようにしましょう」
九条結衣は再び包帯を巻き直し、水を一杯注いだ。「解熱剤です。先に飲んでください」
藤堂澄人の熱はまだ高く、声がこれほど嗄れているのも無理はなかった。
そのことと、藤堂澄人の中度の脳震盪のことを考えると、九条結衣は彼に見えない角度で眉をより深く寄せた。
藤堂澄人は異常なほど素直に水を飲んで薬を飲み、服用後、九条結衣が「夜明けまでまだ数時間あります。もう少し休んでください」と言うのを聞いた。
藤堂澄人は何も言わず、九条結衣が不安そうに彼を一瞥し、ソファーに戻って寝ようとした時、突然肩に重みを感じた。彼女が反応する間もなく、藤堂澄人の大きな体に押し倒されてしまった。
「藤堂澄人、あなた…」
「めまいが…」
低い声が九条結衣の耳元で響き、彼女は彼の拘束から逃れられなかった。
さらに数回もがいてみたが、やはり藤堂澄人の拘束から逃れることはできなかった。
「結衣、動かないで。動くとめまいが酷くなる」
耳元で藤堂澄人の一層嗄れた声が聞こえ、九条結衣のもがく動きは急に止まった。
彼女は今、藤堂澄人に後ろから完全に抱きしめられており、彼の先ほどの言葉で、まったく動けなくなっていた。
耳の付け根に、時折藤堂澄人の熱い息が触れ、彼女の耳も赤くなってきた。
今の姿勢は、九条結衣にとってあまりにも親密で居心地が悪かったが、大きな動きで藤堂澄人の怪我を悪化させることを恐れ、彼の腕の中で固まったまま、動かずにいるしかなかった。