287.病気だけでなく、重症だ

そう言って、彼女は手を伸ばしてドアを開け、外に出た。「行きましょう」

藤堂澄人は冷たい目で彼女を一瞥し、無表情で彼女の横を歩いていた。二人がエレベーターホールに着いた時、藤堂澄人の体が突然数回大きく揺れ、その揺れは明らかで、隣に立っていた九条結衣にぶつかりそうになった。

九条結衣は反射的に彼を支え、眉間に心配の色を浮かべながら尋ねた。「大丈夫ですか?」

「急に目眩がして」

藤堂澄人は手を九条結衣の細い肩に置き、体重の半分を彼女に預けていた。

九条結衣はあの一撃を思い出し、心配になった。藤堂澄人をしっかりと支えながら、眉をひそめて言った。「おそらく軽い脳震盪ですね。病院に連れて行きましょうか」

「必要ない。ホテルに医務室があるから、遠くまで行きたくない」

九条結衣も今は藤堂澄人の状態が心配で、このセブンスターホテルの設備が驚くほど充実していることを知っていた。

医療界でも名の通った総合医である専属の医師が配置されている。

そのため、九条結衣も強くは主張せず、藤堂澄人に付き添ってホテルの裏手にある所謂「医務室」へ向かった。

この所謂「医務室」は、医務室と言っても実際は専用の医療棟で、ホテルの裏にあり、各棟の廊下と繋がっていて、緊急時でも非常に便利だった。

それだけでなく、この建物には最新の医療機器が揃っており、小規模な病院と言っても過言ではなかった。

九条結衣も裕福な家柄の出身だったが、このホテルのオーナーが並外れた資産家であることに感心せざるを得なかった。

「藤堂さん、こちらへどうぞ」

当直の医師は藤堂澄人をCT室に案内した。「藤堂さん、横になってください。頭部スキャンを行います」

検査後、医師は結果を見ながら藤堂澄人に言った。「藤堂さん、ご心配なく。特に問題はありません。主に外部の傷に注意が必要ですが、大きな問題はありませんので、ゆっくり休養してください」

「本当に問題ないのか?」

藤堂澄人の目が細まり、何故か危険な雰囲気を帯びていた。

医師は一瞬戸惑い、なぜ藤堂澄人がこの結果を喜ばないのか理解できなかった。仕方なく、もう一度CTの画像を見直すふりをして言った。「本当に問題ありません」

「問題がある」