九条政の心の中では、すでに九条結衣という娘を勘当していた。
この瞬間、彼の言葉は会社と株主の利益を考えているという大義名分を掲げているが、彼の本当の意図が何なのか、九条結衣の心にははっきりと分かっていた。
彼女の視線は、会議に出席している大小の株主たちをゆっくりと見渡し、唇を引き締めて微笑んだ。
九条政と小林静香が離婚する前は、二人の株式を合わせると40パーセント、九条結衣が持つ15パーセントと合わせて、九条家は九条グループの株式の55パーセントを占めており、他の株主を全部合わせても45パーセントだった。
九条グループに対して、九条家は絶対的な支配権を持っており、九条政の取締役会長の座は当然揺るぎないものだった。
しかし、現状は違っていた。
九条政と小林静香が離婚し、九条政の手元には20パーセントの株式しか残っていなかった。
九条政と小林静香以外に、18パーセントの株式を持つ株主がいて、九条政は2パーセント多いものの、実質的な権力という点では、それほど差はなかった。
九条結衣は参加者たちを静かに観察した後、さりげなく視線を戻した。
「このプロジェクトは確かに良いものですが、誰が研究するかが重要です。これほどの大金を三流の研究室に投資するのは、水の泡になるだけではありませんか?」
そう言って、優雅に微笑んだ。「確かに九条グループはお金に困っていませんが、馬鹿にされるわけにもいきません。皆様はどうお考えですか」
木村靖子の顔は怒りで真っ白になり、歯を食いしばって九条結衣の余裕のある自信に満ちた笑みを睨みつけ、彼女が「三流の研究室」と言うたびに、その口を引き裂いてやりたいほど憎らしかった。
あのあまが現れるたびに良いことは一つもない。なぜ毎回自分に逆らうのか?
このあま!!!
彼女は怒りの感情を悟られないよう、テーブルの角をしっかりと掴んでいた。
株主たちは実際、ホルムアルデヒドフリー環境塗料の研究についてはよく知らなかった。先ほど九条政の説明を聞き、最近の環境保護政策と照らし合わせて、このプロジェクトは実行可能だと考え、すぐには拒否しなかったのだ。
しかし今、九条結衣が突然会社に現れ、この提案を一蹴し、さらに「三流の研究室」という言葉を使ったことで、株主たちの表情に躊躇いの色が浮かび始めた。