278.彼に親指を立てる

誰かが藤堂澄人を見つけ、思わず驚きの声を上げ、すでに何人かがこっそりとスマートフォンを取り出して盗撮を始めていた。

「藤堂社長は九条家のお嬢様とは何の関係もないのだから、理由もなく第三者だと誣告するはずがない。つまり、あの女は紛れもない不倫相手だということだ!」

「そうだ、その不倫相手の娘はお嬢様より2ヶ月しか年が違わないんだぞ!くそっ!!!この九条社長はクズ中のクズだな。奥さんが妊娠して2ヶ月のときに不倫して、しかも26年も続けていたなんて、マジかよ!!」

「本当に気持ち悪い男女だな、ふん!」

「不倫相手と私生児を連れて来て、自分の嫡出子を責めるなんて、この九条社長もよくやるよ。」

「不倫相手と私生児の図々しさには呆れるね。」

「……」

周囲からの非難の声は一言一言が胸に突き刺さるようで、先ほどの九条結衣への非難など取るに足らないものとなっていた。