彼が出てくるのを見て、急いで近寄り、「社長、今日のスケジュールをご報告させていただきます」
このような方法で自分のボスに先ほどの左遷の件を忘れさせようとしたが、藤堂澄人は冷たい視線を向けただけで、「秘書室から誰かが報告に来る」と言った。
つまり、郵便室に行けということだ。
松本裕司は泣きたい気持ちだった。
九条グループの月例株主総会が本日開催された。
この時、会議室では、株主たちが次々と入室し、それぞれの席に着いていた。
「さっき下で九条社長があの私生児を連れて上がってくるのを見たよ」
「まさか九条社長は、あの私生児を会社に配置するつもりなのか?」
「……」
会議室の数人の株主がひそひそと話し合っていた時、九条政の秘書がドアを開け、その後ろから満面の笑みを浮かべた九条政と、念入りに着飾った従順な表情の木村靖子が入ってきた。
全員が一斉に黙り込み、九条政の二人に向ける視線には奇妙な色が混じっていた。
「九条社長は今日はお元気そうですね。何か良いことでもあったのですか?」
ある取締役が口を開き、その後、他の少数株主も同調した。
九条政は手を振りながら笑って言った。「ハハハ、まあ、めでたいことがあれば気分も晴れるというものですよ」
彼は自分の意図を全く隠そうとせず、議長席に座った後、傍らの木村靖子を指さして言った。「こちらは私の娘の靖子です」
「靖子、皆さんにご挨拶しなさい」
木村靖子は大企業の取締役たちと初めて会う場で、表情には少し緊張の色が見えたが、九条グループ会長の娘としての誇りも感じられた。立ち上がって取締役たちに挨拶をした。「皆様、こんにちは。これからよろしくご指導ください」
九条政がまだ何も言っていないにもかかわらず、木村靖子のこの言葉は、この次女が本当に九条グループで働くことになるということを取締役たちに明確に伝えていた。
一同は互いに顔を見合わせたが、態度を示さなかった。しかし、私生児に会社で指図されることを考えると、心中穏やかではなかった。
ただし、重要でないポジションであれば気にしないが、お嬢様の方は...この次女の就職を許すのだろうか?