九条結衣も藤堂瞳がこのような状況で現れるとは予想していなかったため、すぐに眉をひそめた。
さりげなく藤堂澄人を睨みつけながら、人に見られないはずじゃなかったの?
痛くない?痛くないのかって聞いてるの!
この時の九条結衣は、藤堂澄人の頬を平手打ちしたくて仕方がなかった。痛くないのかって聞いてやりたかった。
藤堂澄人の表情も良くなかった。
ここで大人しく妻と仲を深めようとしていたのに、こんな部外者が勝手に入ってきて邪魔をするなんて。
たとえその「部外者」が実の妹であっても、今の藤堂澄人は殺してやりたいほどだった。
「藤堂瞳、誰が許可を出したんだ、ノックもせずに入ってくるなんて!」
彼は九条結衣を降ろす気配もなく、低い声に怒りを押し殺していた。
そして藤堂瞳の隣に立っている木村靖子のことは完全に無視していた。