「藤堂澄人!」
九条結衣の顔が、さらに暗くなった。
彼女はどうしてこの男の自作自演を信じられるのか。この男はずっとこんなに厚かましくて悪質なのに、どうして彼を信じられるのか。
「出て行くの?出て行かないの?」
九条結衣は歯を食いしばって彼を睨みつけた。
「出て行くよ、もちろん」
藤堂澄人は笑い出し、その目の奥に一瞬よぎった意地悪な笑みに、九条結衣は背筋が凍り、不吉な予感が走った。
「どこで転がりたい?どんな体勢で転がりたい?僕は何でも付き合うよ」
その言葉が落ちると、九条結衣の顔は、見事にまた暗くなった。
彼女は彼にひどく腹を立てた。こんなに厚かましい人間を見たことがなかった。
選べるなら、目の前の彼が4年前の高嶺の花のままでいてくれた方が、こんな図々しくて厚かましくて手に負えない藤堂澄人を見るよりましだった。