313.木村靖子を植田涼に送る

木村靖子は今この瞬間、それを痛感していた。

彼女が入ってきた時から、藤堂澄人の九条結衣を見る目は終始優しく、甘やかすような眼差しで、瞳が結衣に対してあからさまに敵意を向けても、彼は一言も言わず、眉をひそめることさえなかった。

「話は終わったか？終わったなら出て行け」

藤堂澄人の容赦ない声が響いた。彼は最初から最後まで木村靖子を見ることはなく、追い払う意図を少しも隠そうとはしなかった。

靖子は先ほどの衝撃から我に返り、深く息を吸い込んで、心を刺すような嫉妬の感情を押し殺し、藤堂澄人の前に歩み寄った。

「澄人さん、瞳を責めないでください。全て私が悪いんです。朝、あなたの頭の怪我を見て心配になって、瞳に少し話しただけなのに、瞳があなたのことを心配しすぎて、こんなに慌てて来てしまったんです」