314.強者に頼って弱者を虐げる奴

木村靖子にこんなことをするなんて、彼にもできないことではないだろう。

藤堂瞳は胸が詰まるほど怒りを感じ、木村靖子の手を引いて外に向かおうとしたが、このまま帰るのは悔しくて仕方がなかった。

ドアの前で足を止め、悔しそうに振り返って、藤堂澄人の傍らに立ち、まるで他人事のように振る舞う九条結衣を睨みつけた。我慢しようとしたが、結局抑えきれなかった。

「九条結衣、何様のつもりよ。弱い者いじめする奴!」

弱い者いじめと言われた九条結衣は「……」

藤堂瞳のバカは自分が弱い者いじめだと言うが、その「強い」というのは藤堂澄人のことで、「弱い」というのは木村靖子のことか?

九条結衣は平静な目で藤堂瞳を見つめ、その瞳には一切の波風も立たず、まるで見世物でも見るかのように藤堂瞳を見ていた。