323.こいつは社長の逆鱗に触れた

九条結衣を見かけた松本裕司は、すぐに挨拶を交わした。「奥様。」

松本裕司からのこの呼び方について、九条結衣はもう訂正するのに疲れていた。彼女は彼の呼びかけを完全に無視し、ただ軽く頷いて外へ向かった。

「奥様、もうお帰りですか?」

「急いでいるの。松本秘書はあなたの仕事に集中して、私のことは気にしないで。」

松本裕司の「奥様」という呼びかけが続き、九条結衣はイライラし始めていた。

「でも、奥様...」

「松本秘書!」

九条結衣は遂に我慢できずに松本裕司の言葉を遮った。「何度言えばわかるの?私はもうあなたの藤堂社長と離婚したのよ。呼び方を変えてくれない?」

松本裕司は九条結衣にそう怒鳴られ、一瞬呆然とした表情を浮かべた。

彼は初めて九条結衣がこのような呼び方で、これほど怒りを爆発させるのを見た。目に驚きの色が浮かんだ。