最上階に着くと、藤堂澄人は弁当箱を持ってオフィスに向かおうとしたが、また田中行に呼び止められた。
「澄人」
藤堂澄人が振り返ると、田中行が彼の方へ歩いてきた。しばらく考えた後、「彼女を諦められないなら、8年前のことを諦めたらどうだ。人生にそんなに多くの8年なんてないんだぞ」と言った。
兄弟として、彼が言えることはそれだけだった。どう選ぶかは、結局藤堂澄人自身が決めることだ。
藤堂澄人は彼を一瞥し、苦笑いを浮かべただけで、何も言わずに自分のオフィスへ向かった。
藤堂澄人がドアを開けて入った時、九条結衣はまだ手元の書類を見ていた。物音を聞いて、思わず顔を上げると、ちょうど藤堂澄人が彼女を見ているところだった。
「お昼ご飯買ってきたから、食べに来て」
九条結衣は一瞬驚いた。藤堂澄人が先ほど出かけたのは、わざわざ彼女のために昼食を買いに行ったとは思わなかった。