木村富子は顔色を失い、靖子に馬鹿だと罵られても反論できなかった。
「昨日は腹が立って、九条結衣にあんな風に侮辱されて、この怒りをどうしても抑えられなくて……」
「九条結衣に仕返しをするにしても、叔父さんに頼むべきじゃなかったでしょう。あの人の能力で何ができるか、分かってたはずでしょう?」
木村靖子は歯ぎしりするほど怒っていた。今や藤堂澄人の前での機会は少なくなっている。もし藤堂瞳が、自分が九条結衣を襲わせたことを知ったら、藤堂瞳の目の中での良い印象は台無しになってしまう。
藤堂瞳は九条結衣のことを快く思っていないとはいえ、是非をわきまえない人ではない。藤堂瞳が自分に失望したら、藤堂家に入る機会はさらに遠のいてしまう。
しかし今の重要なポイントは、それではなく……藤堂澄人だ。