329.CTレポート

長い間、彼女はゆっくりと目を開け、胸の痛みを必死に押さえつけ、藤堂澄人の眼差しに揺さぶられた感情を何とか抑え込んだ。

両頬を強く擦り、意識を清めようとした。「しっかりして、結衣。もう心を揺らすんじゃない」

彼女は立ち上がってバスルームへ向かい、シャワーを浴び、着替えを済ませ、予め用意していた書類の入った封筒を手に部屋を出た。

そして、何か思い出したように方向を変え、ホテルの裏手にある医療棟へと向かった。

九条結衣が訪れた時、当直は若い医師で、昨夜出会った医師ではなかった。

「いらっしゃいませ。何かお手伝いできることはございますか?」

若い医師は九条結衣を見るなり、熱心に出迎えた。

このホテルに宿泊できる客は、裕福か身分の高い人物ばかり。医師も当然、少しも怠慢な態度は取れなかった。