「株式の件で話があるって言ってたけど、何を話したいの?」
九条政は彼女に向かって歩み寄り、彼女の前に座った。彼女と藤堂澄人が持つ九条グループの株式を警戒していなければ、彼女の前に座ることすら我慢できなかっただろう。
九条結衣は彼を一瞥し、すぐには話し出さず、ただお茶を少しずつ飲んでいた。彼女のこの落ち着いた態度を見るにつれ、九条政はますます焦りを感じていた。
彼が最も心配していたのは、藤堂澄人が本当にその15パーセントの株式を九条結衣に渡してしまうことだった。そうなれば、彼はいつでも九条結衣に九条グループから追い出されかねない。
「一体何を話したいんだ。そんなに時間を無駄にする暇はない」
九条政は完全に苛立ち始めていた。
ついに、九条結衣はゆっくりとお茶を置き、彼を見つめて言った。「私が持っている35パーセントの株式を、全部あなたに売るわ」
九条政は一瞬固まり、聞き間違えたと思った。「何だって?」
彼女が持っている35パーセントの株式を全部彼に売る?
頭がおかしいのか?九条グループから出て行くつもりなのか?
もちろん、あの小娘が九条グループから出て行ってくれれば願ったり叶ったりだが、あの小娘はバカじゃない。こんな大きな利権を手放すはずがない。
「現在の九条グループの株価で、私の持っている35パーセントの株式を全部あなたに売るわ」
九条結衣は我慢強く、もう一度繰り返した。
「そんなに都合よく話が進むわけがない」
九条政が九条結衣を簡単に信じるはずがなかった。「何か企んでいるんじゃないのか?」
九条結衣は彼を見て、嘲笑うように言った。「あなた?誰かを陥れるにしても、あなたみたいな弱い相手は選ばないわ。それは私の能力を侮辱することになるから」
「九条結衣、お前...」
九条政は恥ずかしさと怒りで、手を上げて九条結衣の顔を殴ろうとしたが、彼女は手元の書類ファイルを取り上げ、その手を軽く払いのけた。
彼女はまだしっかりとソファに座ったまま、見上げる目つきで彼を見ていたが、その眼底から放たれる威圧感は少しも揺るがなかった。
九条政の上げた手は、九条結衣の視線に押されるように下がっていった。
「私はあなたと喧嘩をしに来たわけじゃない。株式をあなたに売るのは、純粋にあなたのような人間と仕事をして時間を無駄にしたくないからよ」