339.社長が吐血した

田中行と九条結衣の言葉は、ほぼ同時に口から出た。その後、二人とも話を止めた。結衣は田中行の話を聞く気はなく、直接言った:

「雫がここにいるの。彼女が何か困ったことに巻き込まれているんじゃないかと心配で。電話が繋がらないから、探すのを手伝ってもらえないかしら」

結衣の言葉を聞いた田中行は、もはや藤堂澄人のことなど気にも留めず、すぐさま表情を変えた。「すぐに探しに行きます」

田中行が去った後、結衣は辛抱強く夏川雫に電話をかけ続けた。今度は、雫の携帯は完全に電源が切れている状態だった。

結衣の胸に、不吉な予感が染み込んでいった。何度かけ直しても、まだ電源が切れたままで、彼女はついに諦めるしかなかった。

「社長、奥様があちらにいらっしゃいますが、行かれませんか?」

藤堂澄人がその場に立ち尽くして動かないのを見て、松本裕司は非常に忠実に声を潜めて促した。