339.社長が吐血した

田中行と九条結衣の言葉は、ほぼ同時に口から出た。その後、二人とも話を止めた。結衣は田中行の話を聞く気はなく、直接言った:

「雫がここにいるの。彼女が何か困ったことに巻き込まれているんじゃないかと心配で。電話が繋がらないから、探すのを手伝ってもらえないかしら」

結衣の言葉を聞いた田中行は、もはや藤堂澄人のことなど気にも留めず、すぐさま表情を変えた。「すぐに探しに行きます」

田中行が去った後、結衣は辛抱強く夏川雫に電話をかけ続けた。今度は、雫の携帯は完全に電源が切れている状態だった。

結衣の胸に、不吉な予感が染み込んでいった。何度かけ直しても、まだ電源が切れたままで、彼女はついに諦めるしかなかった。

「社長、奥様があちらにいらっしゃいますが、行かれませんか?」

藤堂澄人がその場に立ち尽くして動かないのを見て、松本裕司は非常に忠実に声を潜めて促した。

「俺が行って何になる?関係ないだろ!」

彼が身を翻そうとした時、視線は無意識に結衣の方へ向いていた。彼女がロビーのソファに座り、携帯を手に持ち、いつもの落ち着いた表情に不安の色が混じっているのが見えた。

彼は唇を歪めて笑い、目の奥に嘲りの色が浮かんだ。

彼女は誰に対しても優しいのに、自分に対してだけは冷たくできるのだ。

そして傍らの松本裕司は、普段から天まで届きそうなほど傲慢な自分の上司が、この時でも意地を張っているのを見て、一瞬言葉を失った。

「社長……」

「もう一言言ったら、二ヶ月分の給料を差し引くぞ」

言い終わると、彼は身を翻して立ち去った。松本裕司は明らかに「給料カット」という悪夢に脅えて、即座に口を閉ざした。

自分の上司が実力で独身を貫こうとしているのなら、自分の二ヶ月分の給料を賭けてまで止める理由はないだろう。

彼は即座に藤堂澄人の後を追って外に向かったが、入口に着いた時、澄人の足が突然止まり、松本裕司は止まりきれずに、そのまま彼にぶつかってしまった。

「申し訳ありません、社長」

彼が顔を上げると、藤堂澄人は何も言わず、暖かい白い光の下で、唇が紙のように真っ白で、血の気が全く感じられなかった。

彼が片手で胃をしっかりと押さえ、顔色が極めて悪いのを見た。

松本裕司の心が沈んだ。「社長、あなた……」

「ぷっ——」