340.すごいぞ、私のボス

「奥様がいらっしゃいました。社長、早く気を失ってください」

藤堂澄人の額には、細かい汗が浮かび、松本裕司を冷たい目で見つめた。

松本裕司は自分のボスが理解していないと思い、さらに声を落として急いで付け加えた。「苦肉の策です。奥様が来たので、早く気を失ってください」

藤堂澄人は彼に冷ややかな視線を送り、何か言おうとした瞬間、突然地面に倒れかけた。松本裕司が間一髪で支えなければ、頭から地面に倒れていたところだった。

自分のボスの青ざめた顔色と意識を失った様子を見て、松本裕司は心の中で藤堂澄人に thumbs upを送った。

さすがです、ボス!

演技が素晴らしすぎる。

「社長、奥様がいらっしゃいました」

彼が小声で知らせたが、支えている人物からは全く反応がなかった。松本裕司は心の中で、ボスは役になりきるのが早いなと思った。