救急車が遠ざかっていくのを見つめながら、松本裕司は長いため息をついた。
アシスタントの給料しかもらっていないのに、まるで母親のような心配をしている。アシスタントとしてここまでできる人はいないだろう。
携帯をポケットに入れ、歩き出そうとした瞬間、突然立ち止まり、目に驚きの色が浮かんだ。「社長、本当に気を失ったんじゃないか?」
先ほどの上司の無反応な様子を思い出し、松本裕司は背筋が凍る思いをした。
一方、夏川雫は新しいアシスタントを帰らせ、赤ワインを持って謝罪しようとしたが、山下社長が下品な笑みを浮かべながら、彼女が差し出したグラスを受け取り、言った。「こんな飲み方じゃつまらないよ。別の飲み方にしよう」
夏川雫はこの連中が良からぬことを企んでいることを察した。案の定、彼女が見ている前で、テーブルに置かれていた白酒と黒郎酒を彼女の赤ワインに混ぜ、それを夏川雫に渡した。