二人の間には何の会話もなく、藤堂澄人はただ静かに横たわって、九条結衣が俯いて真剣に仕事をする姿を見つめているだけで、それだけで満足していた。
目元には自然と笑みが浮かび、誰も言葉を交わさなくても、誰にも埋められない満足感が藤堂澄人の心身を心から喜ばせていた。
胃出血のせいで、藤堂澄人はまだ少し衰弱していた。先ほどは木村靖子のあの吐き気がする行為で目を覚まされ、木村靖子を突き飛ばした時に、手の甲に刺さっていた点滴針も強引に抜けてしまっていた。
中の薬はまだ打ち終わっていなかったが、今は九条結衣を見つめているうちに、いつの間にか眠りについてしまった。
九条結衣が会社のメールの処理を終えて我に返った時、藤堂澄人が眠っているのが目に入った。
これは彼女が初めて見る藤堂澄人のこんなにも弱々しい姿で、心の中がどんな感情なのか言い表せなかった。
もうこの人を諦めると決めていたのに、彼が恵らしい目で自分を見つめる時、どうしても冷たくできなかった。
「結衣、あなたって本当に情けないわね」
彼女は眠っている藤堂澄人の顔を見つめ、ため息をつきながら、小さく自嘲した。
決意さえあれば、この男を手放せると思っていたのに、結局は自分を欺いているだけだった。
藤堂澄人への想いは、骨の髄まで染みついていて、彼を手放せないのに、簡単に一緒になることもできない。また同じ過ちを繰り返すのが怖かった。
もし本当に藤堂澄人を断ち切れていたなら、四年後、たとえ藤堂澄人がどれほど彼女に執着しても、切り離すことができたはずだ。
結局のところ、自分が手放せないだけじゃないの。
九条結衣は心の中で再びため息をついた。
スタンドの点滴が終わりかけているのを見て、彼女が前に進み針を抜こうとした時、彼の手を布団の中に入れようとした瞬間、突然彼に手を掴まれた。予想外に強い力だった。
九条結衣は彼が目を覚ましたのかと思い、眉をひそめて彼を見たが、彼の目はまだしっかりと閉じられており、眉間にしわが寄っていた。
九条結衣は二、三回もがいたが、振り払えず、その後、藤堂澄人の掠れた声で呟くのが聞こえた。「結衣、ごめん、行かないで、ごめん……」
この呟きは小さかったものの、病室があまりにも静かで、九条結衣が藤堂澄人の近くにいたため、はっきりと聞こえた。