九条結衣はようやく彼の様子がおかしいことに気づいた。自分の手首に触れている彼の手が冷たく、胸が締め付けられる思いで眉をひそめて尋ねた。「どうしたの?」
「何でも...」
言葉を発した途端、また口から血が溢れ出し、彼のシャツを真っ赤に染めた。出血量はかなり多かった。
「藤堂澄人!」
目の前で彼の顔色が悪くなっていくのを見て、普段は冷静な彼女の瞳に一瞬、動揺の色が浮かんだ。
「結衣、もう一度チャンスをくれ...」
彼の体はふらつき、もう立っているのがやっとの状態だったが、それでも全力で彼女をつかもうとした。まるで意識を失えば、彼女が去ってしまうことを恐れているかのように。
渡辺拓馬が駆けつけた時、藤堂澄人はすでに意識を失っていた。その顔色の悪さに渡辺拓馬も思わず眉をひそめた。必死の救命処置の後、ようやく容態は安定した。