364.もう間違い続けるべきではない

彼は九条結衣が冷たい眼差しで自分を見つめているのを見た。まるで彼女の手には刃物が握られているかのように、ゆっくりと彼の胸に突き刺さっていく。その動きは遅く、死ぬほどの痛みを感じさせるが、彼に楽な死を与えようとはしなかった。

この血を見ない痛みは、本当に耐え難かった。

彼は刃物のような彼女の瞳をじっと見つめ、心臓が何度も何度も千切られていくような感覚に耐えながら、やっとの思いで声を絞り出した。「ごめん」

謝罪の言葉以外に、自分を弁解できる言葉は何も見つからなかった。

九条結衣は激しい反応を見せることなく、ゆっくりと椅子から立ち上がって言った。「謝らなくていい。私がなぜそこにいたか分かる？」

彼女は彼の前に立ち、感情を見せない目で言った。「見知らぬ人からメッセージを受け取ったの。あなたが誰かと密会しているって。不倫現場を押さえに行ったのよ」

彼女の言葉は淡々としていて、何の心の負担も感じさせなかった。

「だから、藤堂澄人、謝る必要はないわ。あの頃の私たちは、お互いを信じることができなかった。あの時のことがなくても、きっと似たようなことが起きていたはず。ただ、当時の私にはそれが分からなくて、あなたでなければいけないと固執していただけ」

九条結衣が部屋に入ってきた時から、彼女の感情は非常に穏やかで、詰問も怒りもなく、完全に他人事のような態度だった。

今この瞬間、彼が当時彼女を誤解して傷つけたことを知っていても、彼女は怒りの感情を少しも見せなかった。

しかし、そうであればあるほど、藤堂澄人の心は不安になっていった。彼には分かっていた。九条結衣は恐らく、彼からどんどん遠ざかっているのだと。

そう気づいた瞬間、彼の心は急に慌てふためいた。心臓が引き裂かれるような痛みが、瞬く間に全身を支配した。

当時の私にはそれが分からなくて、あなたでなければいけないと固執していただけ……

彼は九条結衣のこの言葉を噛みしめながら、心臓が見えない手で強く握りしめられ、息ができないほどだった。

彼は彼女を見つめ、悲しげな笑みを浮かべた。「つまり？今は分かったから、もう迷わない。僕を諦めるってこと？」

彼の目は赤く充血し、もともと血の気のない顔は、今や紙のように真っ白だった。