その様子を見て、藤堂澄人は眉をひそめ、目に苛立ちの色を浮かべた。「他に何か用か?」
「それが……」
松本裕司は頭を抱えた。この件を話せば、また問題になりそうだった。
社長は奥様の件で既にこんな状態なのに、さらなるショックに耐えられるだろうか?
しかし、言わないのは自分の責任放棄になる。
「社長、会社の入札価格の件ですが、会社の幹部以外で知っているのは……奥様だけなんです……」
そう言いながら、恐る恐る藤堂澄人の様子を窺うと、鋭い視線と目が合い、慌てて頭を下げた。
社長の目つきが怖すぎる~
数秒後、責任感のある秘書として、松本裕司は覚悟を決めて口を開いた。「社長、こんなことを言うべきではないのは分かっていますが……」
「言うべきでないと分かっているなら、黙って飲み込め。」