368.藤堂グループの機密漏洩

藤堂澄人は彼女の声の冷たさを感じ取り、心が沈んだ。九条結衣を怒らせてしまうのではないかと恐れ、不本意ながらも、ゆっくりと手を離した。

伏せた瞳に落胆の色が浮かび、九条結衣が外へ向かって歩き出すのを見て、不安げに彼女を呼び止めた。「どこへ行くの?」

昨夜、彼女が去ろうとした時の、表面上は平静だが決然とした眼差しを思い出し、心が突然痛んだ。

しかし彼にはわかっていた。しつこく追いかけ続けても、九条結衣の嫌悪感を増すだけで、さらに遠ざけてしまうことになる。かといって、このまま手放すことなど、なおさらできなかった。

すでにあれほどの年月を失ってしまった。彼女と一生を擦れ違ったままでいいはずがない。

いつも断固とした決断を下してきた藤堂澄人が、初めて自分がどうすべきかわからなくなった。

どうしたらいいのか迷っているその時、九条結衣が言った。「朝ごはんを買ってくるわ。医者があなたの胃の具合はかなり深刻だって。このまま治療しないと死ぬわよ」

最後の言葉を言う時、九条結衣の目が冷たくなり、その瞳には警告の色が宿っていた。

しかし藤堂澄人はそんな彼女の様子を見て、心の中で喜びを感じ、その喜びは隠すことなく彼の目に溢れ出た。

「お腹は空いていない」

やはり彼女が単なる口実で去ってしまうのではないかと心配で、藤堂澄人はそう言った。

「空いてなくても食べるの!」

九条結衣の声は少し高くなり、なぜか威厳が漂い始め、藤堂澄人は反論する勇気すら持てず、乾いた唇を動かしながら「わかった、言う通りにする」と答えた。

九条結衣がドアを開けて出て行くと、藤堂澄人はベッドに背をもたせかけて座り、寂しげな表情を浮かべた。

実際、九条結衣が本当に朝食を買いに行ったのか、それとも単なる口実で去ったのか、彼には彼女を引き止める理由も資格もなかった。

やり直すチャンスが欲しかったが、彼女がそれを与えてくれる理由などあるはずもない。

そう考えると、彼は苦笑いを浮かべ、目の奥の痛みを押し殺してベッドに寄りかかったまま黙っていた。

30分が経過しても九条結衣は戻ってこず、藤堂澄人の目の中の期待は少しずつ暗くなっていった。

そのとき、病室のドアが開く音がした。物音を聞いた藤堂澄人の顔が急に明るくなり、目を開けてドアの方を見たが、次の瞬間、顔の笑みは消え、厳しい表情に変わった。