377.九条初を返して

あるいは、彼も実は気づいていたのに、知らないふりをして、結衣の要求に従って結婚したのだろうか？

驚きの後には、より深い自責の念と心痛が襲ってきた。

あの頃の結衣は、一体どれほど彼を愛していたのだろう。九条グループ全体を賭けてまで、彼と結婚しようとしたのだから。

そして彼は、その度に彼女にどう応えていたのだろうか？

それを思い出すたびに、藤堂澄人の心は刺すような痛みに襲われた。

彼は九条結衣を見つめながら、許しを請う言葉が、どうしても口から出てこなかった。

どう考えても、あの頃の出来事は、確かに彼がしでかしたことで、完全な過ちだった。弁解するつもりはなかったが、結衣の「これで終わりにしましょう」という一言が、彼の心を不安と痛みで締め付けた。

結衣が再び立ち去ろうとした時、澄人は再び彼女を呼び止めた。「結衣」

彼は彼女の前にゆっくりと歩み寄り、唇を噛みながら、蒼白い笑みを浮かべた。「私の償いを受け入れてくれなくても構わない。でも、諦めるつもりはない」

それを聞いて、結衣は眉をひそめた。「どうしてそこまでするの？もう話は済んだでしょう。私は気にしていないのに、なぜ過去の過ちにこだわるの？」

澄人は悲しげに笑った。「あなたが気にしないのはあなたの勝手だし、私が償うかどうかは私の勝手だ。お互いに干渉はできない」

結衣は彼の言葉に詰まり、反論の言葉が見つからなかった。

澄人は彼女が黙って顔を曇らせているのを見て、蒼白い笑みを目尻に浮かべた。「私を受け入れてくれなくても構わない。強要はしない。でも、努力もせずにいたら、後悔することになる」

彼は手を伸ばし、軽く彼女の頬に触れようとしたが、彼女は無意識に避けた。

「結衣、あなたは好きなようにすればいい。私が何をするかは気にしなくていい。それでいいだろう？」

彼は期待を込めて彼女を見つめ、しばらくして結衣は眉をひそめながら冷たい声で答えた。「好きにすれば。後悔しなければいいわ」

澄人の目に笑みが広がった。「後悔なんてしない。たとえ一生あなたに冷たくされても、後悔はしない」

結衣は彼の言葉を聞いて、皮肉っぽく口角を上げた。「一生なんて、言うのは早すぎじゃない？」

藤堂澄人のような男が、一人の女性のために一生を捧げるだろうか？