傍らにいた木村富子母娘は九条政の言葉を聞いて、お互いに目を合わせ、先ほどまでの九条結衣に軽蔑された怒りも、この時には幾分か消えていた。
木村靖子は九条政の側に寄り、彼の腕に手を回し、怒りで激しく上下する背中を優しく撫でながら、静かに諭すように言った:
「お父様、もういいじゃないですか。お体を壊してしまいますよ。今や九条グループの株式の55パーセントはお父様のものなんですから、これからは九条グループのことは全てお父様の思い通りです。取締役会の連中だって、お父様の決定を止めることはできませんよ。そう考えれば、少しは気が晴れませんか?」
九条政は木村靖子の優しい声を聞いて、怒りが確かに収まってきた。靖子の手の甲を優しく叩きながら言った:
「やっぱり靖子は良い子だ。お父さんが可愛がるのも当然だな」