389.全世界から見放された喪失感

九条結衣は笑って言った。「確かに不愉快ですね。だから、おじいちゃんは私に結婚式場を解体するように頼んだんです。」

彼女は遠くにある、すでに見る影もない結婚式場を指さしながら、九条愛に告げた。

九条愛は遠くを一瞥し、笑いながらサングラスを元に戻した。「父らしいやり方ね。」

「おじいちゃんはどこ?」

「入院したの。今から見舞いに行くところよ。」

「どうしたの?急に入院するなんて。」

九条愛は眉をひそめ、使用人を呼んでスーツケースを中に運ばせ、自身は九条結衣と一緒に病院へ向かった。

病院への道中、九条結衣は九条爺さんの入院の経緯を九条愛に説明した。話を聞いた九条愛は怒り心頭で、九条グループに乗り込んで九条政を殺してやりたい気分になった。

九条愛の短気な性格は完全に九条爺さんから受け継いだもので、九条結衣は彼女が九条政の悪口を道中ずっと言い続けるのを聞きながら、ただ無力に首を振るしかなかった。

九条爺さんは病室で九条愛を見かけたとき、とても驚いた様子だった。

「愛、なぜ帰ってきたんだ?」

「おじいちゃんに会いに来たのよ。」

九条愛は爺さんの傍らに座り、「お父さん、私たちは血のつながった親子だから、心が通じ合ってるのよ。お父さんが入院したって感じたから、すぐに飛んで帰ってきたの。」

「ふざけるな。本当のところを話せ。なぜ突然帰ってきた?」

「本当に何でもないの。ただおじいちゃんに会いたくなっただけ。」

九条愛の目が泳ぎ、爺さんに見透かされないよう、急いで九条結衣に目配せした。

九条結衣はすぐに理解し、手に持っていた魔法瓶をテーブルに置いた。「おじいちゃん、これは田中さんに特別に作ってもらったスープです。飲んでみてください。」

そう言いながら、魔法瓶からスープを注いだ。

田中さんの作るスープは薄味で、入院患者に最適だった。

爺さんの注意は確かに九条結衣によってそらされ、九条愛はほっと息をついた。九条結衣の問いかけるような視線に会うと、ただ軽く首を振るだけだった。

爺さんは魔法瓶にまだ半分以上残っているのを見て、思わず笑って言った。「こんなにたくさん作ってどうするんだ。おじいちゃんはそんなに飲めないよ。」

九条結衣は爺さんの言葉を聞いて一瞬固まり、目に不自然な色が浮かんだ。