藤堂澄人は一瞬戸惑ったが、九条結衣に自分の決意を疑われることを恐れたかのように、すぐに忠誠を誓うように言った。「全て君の言う通りにするよ。どうしたいか、君の好きなようにして」
「じゃあ、最も重い刑罰で判決を下して」
藤堂澄人は軽く笑って、頷いた。「わかった」
二人は周りを気にせずに話し合い、九条政と木村富子を完全に無視していた。
九条結衣は話し終えると、九条政たちを一瞥もせずに、お爺さんの病室へと歩き出した。
藤堂澄人も迷うことなく彼女の後を追い、後ろの二人を完全に無視した。
木村富子は怒り心頭で、九条結衣と藤堂澄人の最後の会話を思い出し、さらに心配でたまらなかった。
「どうしましょう?政さん、警察は藤堂グループが靖子の企業機密漏洩を証明する十分な証拠を提出したと言っています。靖子は本当に刑務所に入るんでしょうか。まだ若いのに、前科をつけるわけにはいきません」
靖子が刑務所に入ったら、どの名家が彼女を嫁に迎えたがるでしょうか。
以前は靖子が藤堂澄人と結婚できることを期待していたのに、今や藤堂澄人は九条結衣というあの妖婦に魅了されてしまい、靖子にはもう望みがない。
藤堂家に入れなくても、九条家のお嬢様である限り、名家に嫁げないことはないはずだった。
でも今、もし本当に刑務所に入ってしまったら、もう望みはない。
九条家との縁組みを望む人がいたとしても、前科者を妻にしようとは思わないはず。
九条グループの支援を必要とする家なら、彼女自身が相手にしたくない。
九条政も藤堂澄人のこの容赦ない対応に戸惑っていた。
特に先ほど九条結衣が「最高刑で」と言った時、藤堂澄人があんなにも軽々しく承諾したことから、彼には本当の実力と自信があることを悟った。
もし本当に最高刑で判決が下されたら、靖子が出所するのはいつになるかわからない。
「心配するな、もう少し考えてみる。検察には知り合いがいるから、状況を聞いてみよう」
九条政はそう言ったものの、内心では自信がなかった。
認めざるを得ないが、ビジネス界での人脈は、かつての小林静香が築いてくれたものだ。政界で未だに顔が利くのも、完全にお爺さんのおかげだった。
もしお爺さんが本当に見放したら、政界の誰が彼に目もくれるだろうか。
彼は心の中ではわかっていたが、木村富子には言うつもりはなかった。