399.男が色っぽくなったら女の出番なんてない

男の逞しい胸が背中に触れ、その体温を感じた九条結衣の体が突然硬直した。

彼女が身をよじると、藤堂澄人は腰に巻き付けた腕にさらに力を込めた。

背後から肩に顎を乗せた藤堂澄人の、かすれた声が特別に心地よく響いた。「明日は田中さんに俺の分も作ってもらおうか。あの人、けちだって知ってるから、材料を送らせるよ」

九条結衣「……」

いつの間に彼と田中さんの仲がそんなに良くなったの?

九条結衣が黙り込むのを見て、藤堂澄人は腰に巻き付けた手で、贅肉のない彼女の腰をつついた。「どう?」

九条結衣は非常にくすぐったがりで、藤堂澄人にそうされると思わず後ろに身を引き、さらに彼の体に密着してしまった。

「分かったから、早く離して!」

彼女は顔を曇らせ、髪に隠れた耳が再び熱くなっていくのを感じた。