400.養ってた男に裏切られた

「ホテルで二人が浮気現場を押さえられて、その男女を私の部下に殴らせたわ。見るのも嫌になって、しばらく国に帰ることにしたの」

九条結衣はこの話を聞いて少し意外に思った。遠藤隼人は彼女の叔母がイタリアで知り合い、すぐに結婚した貧乏な路上画家だった。

彼とはあまり親しくなかったが、唯一の印象は芸術家らしい雰囲気を持ち、温厚で教養があり、女性を魅了しやすい男性だということだった。

九条結衣から見ると、遠藤隼人と叔母が並んでいる時、実はあまり釣り合っていなかった。遠藤隼人はあまりにも柔和で、話し方もゆっくりとしていた。

一方、九条愛は行動力のある人で、キャリアウーマンのような雰囲気を持っていた。もっと言えば、二人が一緒にいる時、遠藤隼人は九条愛の従者のように見えた。

しかし九条愛は気に入っていた。おそらく遠藤隼人のその温厚な性質に惹かれたのだろう。