394.木村靖子のために頼む(1)

結衣はこの言葉で、明日も彼に会いに来るということなのか?

午後、あの煩わしい渡辺拓馬は明朝には退院できると言っていたが、彼は...実はもう数日入院していたいと思った。

藤堂澄人は心の中で密かに決意を固めた。

藤堂澄人の目に隠しきれない喜色を見て、九条結衣は少し呆れた。

藤堂澄人がこんなにも機嫌を取りやすい人だとは思わなかった。一杯のスープで、まるでその場で爆発しそうなほど喜んでいる。

思考を切り上げ、隣のパソコンから絶え間なく届く通知音を聞きながら、九条結衣は眉をひそめ、我慢できずに注意した:

「入院中はちゃんと休んで。会社の仕事は松本秘書に任せなさい」

九条結衣のぎこちない忠告に、藤堂澄人は一瞬驚いたが、すぐにパソコンの通知音を聞いての発言だと気づき、心が温かくなり、目の中の喜びの色がさらに濃くなった。

「結衣、僕のことを心配してくれているの?」

彼は甘えん坊の子供のように、九条結衣の手を取って軽く揺らしたが、九条結衣に手を払いのけられてしまった。

この何かというと彼女に触れようとする悪い癖は誰が付けたのか?(山田お婆さん:ふん!お前じゃないか?素直じゃない嫁よ!)

「休んでて。おじいちゃんの様子を見てくる」

「僕も一緒に行く」

藤堂澄人はすぐにテーブルから立ち上がり、払いのけられた手で、また試すように九条結衣の手を掴もうとしたが、彼女の冷たい視線に遮られた。

彼は手を上げて、照れくさそうに鼻先を撫で、にやりと笑って言った:「おじいさんが僕にスープを半分くれたんだから、お礼を言いに行かないと」

そう言いながら、九条結衣が反対する暇も与えず、彼女の肩を抱き:「行こう」

「手を離して」

九条結衣は眉をひそめ、低い声で言った。

藤堂澄人は素直に九条結衣の肩から手を離したが、彼女のすぐ近くに立ち、ほとんど体が触れそうなほど近づいて歩いた。

ドアを開けて出たところで、廊下の突き当たりのエレベーターホールから、急ぎ足の音が聞こえてきた。

「澄人」

聞き覚えのある声に、九条結衣は思わず眉をひそめ、目を上げると、九条政と木村富子が険しい表情で彼らの方へ歩いてくるのが見えた。

藤堂澄人の隣にいる九条結衣を見て、九条政の表情が変わり、木村富子に至っては歯ぎしりするほど憎々しげだった。